イタコとは、一言でいうと霊媒を行う女性のことですね。
あなたは、イタコというとどんなイメージを持っていますか?
亡くなった人の霊を自分の身体に降ろして、その人の言葉を代弁してくれる人、という感じではないでしょうか。
今回は、
など、真実について解説していきます。
イタコは本当に降霊できるのか?そもそも本物のイタコは存在するのか?
疑問について見ていきましょう。
1. イタコとは何者か?
イタコとは、あの世とこの世をつなぐ霊媒を行う女性のことを指します。
イタコは日本のシャーマンとも呼ばれていますね。
神社の巫女は神の霊のみを降ろしますが、イタコは死者や生きている人の霊魂を降ろすことができます。
そして亡くなった人の魂と相談者の仲介をし、会話を成り立たせる口寄せをしてくれるのがイタコです。
その上悩み事の解決や人生の相談に応じて人々を導く役割を持っているため、地元では「神様」と呼ばれて敬まわれています。
イタコになるには霊感を持っていることが基本条件で、現役のイタコに弟子入りしたり、お寺で厳しい修行をしたりします。
宗教学者堀一郎氏によると、修行の期間は1年から5年で、初めの数年は板の間の板を打ってお祓いの文句やオシラ祭と呼ばれるオシラアソバセの祭文を習います。
その後スキルが上がるとダイジュユリ、デンジュ、ユルシ、ウズメソと呼ばれるイニシエーションを行なって、約一週間神社にこもってから仕事をします。
しかし、いくら修行を積んでも口寄せができない人もいるので、そう誰でも簡単になれるものではありません。
イタコは盲目か弱視の女性が生活のために職業にしたとされていますが、厳しい修行が必要なため、だんだんなり手が少なくなり、現在ではほとんどが高齢者です。
イタコは東北北部に昔からある風習や信仰で、現在も職業として存在しています。
青森県の「津軽のイタコの習俗」と、秋田県の「羽後のイタコの習俗」は国の選択無形民俗文化財になっているんですよ。
イタコの語源はアイヌ語の「itak(イタック)=神様がこう仰った」からきているという説や、「斎く(いつく)」からイチコへ転化し、それがイタコに変化したとする説などがあります。
また、呼び方も地方によって異なり、北東北では「イタコ」、南東北の方では「オガミサマ」、山形では「オナカマ」、福島県では「ミコサマ」、他に「ワカサマ」と呼ぶところもあります。
占いの際には数珠やイラタカ(角がある数珠)を使い、一部のイタコは梓弓(あずさゆみ)という弓状の楽器や和琴、太鼓などを用いることもあります。
楽器を用いるのは日本の古代音楽の名残で、農村信仰などで使われた日本の伝統音楽で最も古いものの一つです。
熟練したイタコは、ただ霊媒をするだけはありません。
神霊を通して人や物事の吉兆を占う「神口(かみくち)」、生き霊の本心や願いを聞く「生口(いきくち)」なども行います。
また、守護霊を降ろして相談者を導くカウンセラー的な役割をすることから、イタコは霊媒師の中では最も位の高い霊能者とされています。
ちなみに、日本で霊媒を行う同じような存在として、沖縄県や鹿児島県奄美地方の「ユタ」が有名ですね。
2. イタコの口寄せとは?
イタコが行う「口寄せ」とは、死者の霊や生き霊、神の霊、仏の霊などを呼び出し、その霊体を自身の身に憑依させる方法です。
口寄せの種類は3種類あります。
- 神口:かみくち。神霊や守護霊など霊格の高い霊体を降霊させる口寄せ
- 仏口:ほとけくち。四十九日が過ぎて成仏した死者の霊体を降霊させる口寄せ
- 生口:いきくち。いきている人の霊体を降霊させる口寄せ
口寄せの歴史は古く、昔は政治を司る権力者にとって、重要な存在でした。
平将門の「将門記」、鎌倉幕府の「吾妻鏡」などにも口寄せはの記載があります。
その記述によると、「重要な政治判断の場面では、過去の権力者の霊を呼んで口寄せをした」と伝えられていますね。
現在でも、口寄せを行ってくれるイタコは存在します。
特に青森県の恐山のイタコが有名で、夏の例大祭(7月20日〜24日)と、秋詣り(10月上旬の3日間)の年2回、イタコが口寄せを行なっていますよ。
前の日から宿坊に泊まり、朝4時から長い時間待って、やっと順番が回ってくるほどの人気ぶりで、1回5000円で行ってもらえます。
ただし、実際の口寄せは「心理カウンセリング」的な面が大きいのです。
クライアントの心情を読みとり、相談に乗り解決策を示すんですね。
3. 本物のイタコは存在するのか?
恐山のイタコのように、現在でも口寄せを行うイタコが職業として存在しているのは事実です。
ただ、「本物の霊的力を持ったイタコが存在するのか」というのは大きな疑問ですね。
イタコは「死者や祖霊の言葉を伝える者」として、氏子の寄り合いや祭りで登場していました。
しかし、古くから存在していたとはいえ、その力が本物であったかどうかについては、確かめる術はありません。
現在、イタコの能力に関しては、正直信憑性がかなり薄いというのが事実です。
口寄せは、降霊によって呼び出した本人と全く同じ声、口調、口癖などで話すとされています。
しかし、昔テレビでイタコが口寄せをするのを見た際には、外国人の降霊であったにもかかわらず、なぜか日本語で、しかも東北弁でした。
きっと、テレビを見ていた人はみんな「胡散臭い、嘘なのではないか」と思ったのではないでしょうか。
呼び出した本人と同じ口調どころか、全く違う言葉で話しているのですから、そのイタコの能力が本物ではないのは確かでしょう。
また、最近イタコの口寄せを体験した人の意見をネットで見ることができますが、イタコの能力を疑わざるを得ない体験談が多いですね。
ネット上の体験談をいくつか紹介しますね。
- 私は酒を飲まず低血圧なのに、父親の霊から「お前は高血圧だから酒は控えろ」と言われた
- 本当は存在しない弟のことを試しに聞いてみたら、実在しない弟について語り出した
- 口寄せの定番フレーズは決まっていて、「遠いとこ、よう来た」「先に逝ってしまって申し訳ない」「何かあれば夢で知らせる」「みんなで力を合わせて頑張れ」など
やはり、イタコの口寄せや降霊の能力に関しては、信憑性が薄いといえます。
ただ、イタコの能力にも個人差がありますからね。
稀に、本物の霊能力を持ったイタコもいるにはいるのです。
たとえば、恐山に、霊力が特に強いと言われる中年のイタコさんが一人います。
彼女は「最後のイタコ」と呼ばれていますね。
彼女の話には、「イタコの能力は本物なのかもしれない」と感じさせるものがあります。
その人の話によれば、亡くなって間もない仏様を降ろすと、必ず体が重くなり、強烈な眠気に襲われるといいます。
また、自殺した仏様を降霊した場合、首や手首、体の節々が痛むこともあり、どんな死に方をしたのかが分かると言っています。
最後のイタコさんの話によると、残された人たちが、不思議な声や音によって亡き人の存在を身近に感じ、心慰められているのは事実だそうです。
そんな話を聞くと本当なのかもしれないという気持ちも湧いて来ますね。
イタコの能力について、信憑性が薄いのは事実ですが、この「最後のイタコ」のように、本物の霊能力を持ったイタコが稀に存在することもあるんですね。
イタコさんでも人気のある人もいればそうでない人もいますからね。
イタコブームに便乗していただけで、全く実力のないイタコもたくさんいたのでしょう。
まとめ
イタコは、様々な霊を降霊し、口寄せによって霊と相談者の仲介をする霊媒師です。
降霊では死者の霊、神仏の霊、生き霊などを降ろすことができ、仲介の他にも未来予想などの占いも行います。
職業としてのイタコは現在も存在していますが、どいらかというと彼らの口寄せは「心理カウンセリング」に近いものです。
イタコの降霊や口寄せの能力については信憑性がかなり薄いですが、
恐山の最後のイタコのように、まれに本物の霊能力を持ったイタコは存在しますね。
最近ではあまり語られなくなったイタコですが、日本古来より確かに存在していた立派な職業です。
現在はなり手がなくなりつつあり、恐山にいる中年のイタコさんが最後と言われています。
日本の神仏や世界観を反映しているとも言える、伝統的なイタコが絶滅しないことを願うばかりです。
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